アノニマス
少年は立ち竦んでいた
目の前で起こっている現実に
ただ傍観することしかできずに
水をかけられている少年とそれを嘲笑う少年たち
自分を守る為にただ心を殺すしかなかった
そのとき濡れた少年が僕を睨んだ
「神様、助けてください」
少女は見つめていた
暗い部屋 光る画面 飛び交う言葉
「ここでは好きな自分でいられるの」
壁の向こう怒鳴る父とそれに言い返す母の怒鳴り声
自分を守る為にただ心を隠すしかなかった
そのとき少女の手首にカッターがあたっていた
「神様、助けてください」
彼女は追われていた
育児 パート 睡眠時間 貧しさに
自分のことなんてどうでもよかった
目の前で泣き叫ぶ我が子をただ呆然と見つめていた
この子を守る為にただ心を壊すしかなかった
そのとき彼女の右手が我が子の口を塞いでいた
「神様、助けてください」
無名の苦しみは
誰に知られることもなく
誰にほめられることもなく
それでも今を生きている
必死で祈っている
「幸せになれますように」