先生や大人の言葉、テレビやネットで見聞きすること。
「いろいろな人が生きてる世界に僕らは生きているんだよ。」
このことはみんなよく知っていると思います。
僕もそうでした。
だけど実際にその生活を体験したり、交流したり、共に過ごしたりしないと中々その実感は湧きません。
僕の心の壁は「出会い」によって薄くなっていきました。
そんな大切な一つの出会いの話をします。
最近どこに行っても外国の人をよく見かけます。
僕が地元以外知らなかった子供の頃は外国の人を【宇宙人】くらいに遠い人だと思っていました。
だけど、そんな僕の考えを変えてくれたきっかけがありました。
僕が小学校3年生の頃、我が家に一人のアメリカ人女性がホームステイで来ることになりました。
日本に勉強に来る大学生さんでした。
一ヶ月間くらいの滞在だったと思います。
年齢は二十歳前後でエミリーという名前でした。
この頃の我が家は、真ん中の姉は不登校、僕も雄介も毎日遅刻して学校に行っているような状態でした。
我が家にとってはいろいろ初体験だらけの一大イベントでした。
エミリーと最初に会った時、170センチ以上の身長と金髪、その上本物の英語で、僕は『どう接したらいいんだろう』と頭の中がパニックになりました。
母が簡単な英語で自己紹介のやり方を教えてくれていたのに、僕らの言う英語とエミリーの言う英語が違いすぎて『これ通じるのかな』ってすごく不安でした。
僕が緊張しながら「マイネームイズシロウ」と言うと、エミリーは笑って「シロー!!」と言ってくれました。
その優しい笑顔にホッとしました。
それからエミリーとの生活が始まりました。
朝食は普段はバラバラだったけれど、このときはみんなで一緒に食べました。
母が作った料理を僕らがエミリーに持っていき「メダマヤキ」など料理名を伝えるのです。
エミリーも「おぉメダマヤキー」と返してくれるので楽しくなってきました。
エミリーは朝から勉強に出かけて、夜帰ってきました。
晩御飯のときはその日覚えたての日本語を話してくれるのです。
面白かったのは電車やバスのアナウンスです。
「次は〜かたた〜かたた〜」など、声真似までしてくれてみんなで笑いました。
休みの日はみんなでバーベキューをしたり、植物園やお城に行ったりしました。
あまり良くなかった我が家の雰囲気がすごく明るくなって、みんな笑顔でいっぱいでした。
エミリーがいつもニコニコしてくれていたからです。
楽しい日々はあっという間に流れ、エミリーが帰る前日の夕方。
エミリーの誘いで、雄介と僕の3人で犬の散歩に行くことになりました。
その日は小雨が降っていました。
長靴を履いてから傘をさそうと思ったらエミリーはいらないと言います。
傘じゃなくて僕ら二人と手を繋ぎたかったのです。
エミリーが真ん中に立って僕らは両サイドで手を繋いで歩きました。
言葉が通じないから不安そうにモジモジしていた僕らを見てエミリーが歌いだしました。
優しい歌声です。
「チップチャップチップチャップチップチップチャップ♪」
途中途中でそう繰り返す部分があります。
水たまりで足をチャプチャプさせながら繋いだ手を振って歌っています。
僕らも楽しくなってなってきて一緒に歌いました。
「チップチャップチップチャップチップチップチャップ♪」
楽しくて笑いながら何度も何度も一緒に歌いました。
言葉は分からないのに、「大丈夫だよ」って言われているみたいで、泣きそうなくらいに楽しかったんです。
本当にエミリーのことが大好きになりました。
次の日エミリーを送っていく時、寂しくて寂しくて泣きました。
エミリーはそれでも笑って頭を撫でてくれました。
きっといつか会えるって今も信じています。
言葉や肌の色、体や頭の能力、文化や思想が違っても僕らは同じ地球に生きている同じ人間です。
そんなことを考える必要も本当はないのかもしれません。
言葉や知識よりも先に肌で感じることが大切だと思うのです。
これから沢山の人と出会い、共に過ごし、笑いあい、歌いあい、みんなが一緒に生きているこの世界のことを感じていきたい。
エミリー出逢ってくれてありがとう。
シロー
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