僕は19才の時「ドクロのある国」という曲を創った
この曲が出来たきっかけはカンボジアでの旅だった
僕の命への感覚が変わった旅
それは僕の人生が開けた旅でもあった
当時僕は19才
バンドのメンバーと音楽を中心に貧乏ながら共同生活をしていた
そんなある日のりくんの友達と一緒にご飯を食べに言った時のこと
その友達は世界を旅することが好きで
バックパッカーと呼ばれる旅人だった
彼の旅の話を聞いて僕らは純粋に憧れた
でもまさか自分が行くなんて思ってなかった
話の途中彼が言う
ジェリービーンズも伝える生き方してるし若いうちに世界を見たほうがいいよ
今度一緒に旅に行こう
僕の中で無かった選択肢が生まれた
それだけで世界が広がったように思えた
僕らは迷い 戸惑いながらも
旅に行くことを決めた
そこからは本当にあっという間だった
気がついたら僕らは空港にいて
気がついたら日本を飛び出していた
飛行機の中で不安や恐怖やありとあらゆる感情が心にあることを実感した
この旅は半月ほどの日程の中で
初日と最終日以外は一人で行動する予定だった
皆が人生初の海外
そして一人旅だった
タイに到着して
思っていたタイよりかなり都会なことにびっくりしながら
僕らはカオサン通りというところでこの度のきっかけをくれた彼と合流して
その日はみんなで観光したり飲んだり食べたり目一杯楽しんだ
そして次の日の朝
それぞれがそれぞれの行きたいところに進みだした
史朗以外の目的地はカンボジアだったため
そこでひとまず史朗と別れた
カンボジアの国境までたどり着いて
入国した時
急に空気が変わった
何人もの子ども達が僕らに集まってきた
言い方は悪いかもしれないが集まると言うより群がるに近いのかもしれない
子ども達はみな痩せていて
その目は本当に命がけだった
僕はその時なんの覚悟もできないまま
ここにきたことに気がついた
そうか気持ちなんて関係なく
これが現実なんだ
ここからは命がけなんだ
そう思った
国境からピックアップの車の荷台に乗って
シェムリアップという街にきた
アンコールワットという巨大遺跡の傍の街だ
到着したのが夜中ということもあって
僕らは次の日の朝に別れることになった
次の日の朝
僕らは別れた
一人になって
そこからが本当に大変だった
遺跡を見ている途中で少年たちに襲われたり
バイクタクシーに森の奥まで連れて行かれてぼったくられたり
軍の人たちに怪しまれて銃を突きつけられたり
本当に一秒一秒が命がけで
そこにいるみんな
生きるために生きていた
僕は命について考えてきたつもりでいたけど
生きている実感があってこそ
命がみえるんだと思った
そんな時一人の女の子と出会った
カンボジアでは貧しさで学校に行けず
小さな子どもたちが商売しているのがごく普通で
その子は見ためが5才くらいの女の子だった
沢山の子ども達が僕に小物とか飲み物を売りに来ている中
その子はなんの商品も持たず
僕の袖を掴んで買ってほしいと言ってきた
僕はなんのことだかわからなかったけど
すぐにわかった
この子は自分の身体を売っている
こんなに小さな子がそこまでしないと生きていけないのか
周りの大人はこれが当たり前と言わんばかりに素通りしていく
その子の目は本当に純粋で
僕はその目を見れなかった
何が正しいのかがわからなくなって
僕はその子に少しのお金を渡して
逃げた
自分の無力感にただ逃げることしかできなかった
しばらくして
物乞いをしている親子らしき3人がいた
その中心に子どもがいて彼の顔は焼けただれてのっぺらぼうだった
そこに日本語の話せる人がいて彼が教えてくれた
この親は物乞いをするために
幼いわが子の顔を焼いたんだよ
僕は言葉が出なかった
命ってなんだろう
お金ってなんだろう
家族ってなんだろう
答えのない問いが頭の中で爆発しそうだった
カンボジアには内戦で埋められた地雷がまだ数多く残っていて
至る所にドクロのマークの看板が立てられている
その地雷で足や命を奪われる人が沢山いて
その看板のドクロマークはまるで
死を忘れるなと言わんばかりに常に目に入ってくる
僕らのすぐ隣には常に死がいて
だからこそ僕らはみな必死に生きている
カンボジアの旅ではいろいろあったけど
何よりも印象に残っているのは
どんな状況にあっても
彼らはみな幸せそうに笑っていたということ
その笑顔を見た時
今までの僕の考えていた常識は全てリセットされたみたいだった
カンボジアで感じた生きるために生きるということ
その気持ちを忘れたくなくて
自分の無力感とともに詰め込んだのが
「ドクロのある国」だ
今この瞬間を共に生きる命を
現実を
知ることできっと僕らの中の世界は変わるから
ドクロのある国
僕の心の中には忘れられない記憶がある
いつか僕は旅に出た
知らない国に旅に出た
その国は貧しくて
子ども達はこんな僕にさえ
希望を求めて群がる
その子達の中には足の無い子どももいた
何も無かったかのように綺麗な瞳を見せて
その足を見た時
僕は目を背けた
僕には見れなかった
その瞳も見れなかった
話は変わって今
この国にはもうすぐ
台風が上陸するらしい
僕はただこの嵐が
あの子達に届かぬよう
祈ってただ眠るだけ
起きたらまた祈ろう
神様
どうかお願い
もし平等なんてあるのなら
あの子達の試練を
どうか僕に分けてください
でも
僕らには服がある
僕らにはあたたかいベッドがある
僕らには食い余るほど
僕らには食べ物があるある
僕らには嵐も怖くない
僕らには帰れる家がある
僕らには金がある
僕らには時間がある
僕らには‥
ある‥
なんでもある‥