キキ また遊ぼうな

不登校だった僕らから

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僕が小学校1年生の時


近所で子犬がダンボールに入っていると姉ちゃんが帰ってきました




僕ら兄弟は夜にそのダンボールを見に行きました


そこには小さな柴犬がいました




僕らはその子をすぐに連れて帰りました




両親は僕らの熱意にその子を家族に迎えることを許してくれました




その時丁度テレビでジブリの映画「魔女の宅急便」がやっていて




その子犬は女の子だったので子ども達はすぐにその子の名前を「キキ」と名付けました




そしてその日から「キキ」が家族になりました




キキはどんな時でも家族が大好きでいつでも傍にいてくれました




姉ちゃんが不登校になり引きこもっている時も
姉ちゃんは一人でキキによく喋りかけていました


キキは黙って嬉しそうに話を聞いて姉ちゃんの顔を舐めます




その後弟の僕らが不登校になり
引きこもるようになりました




僕が死にたくなって
誰にもそのことを言わなかった時


キキにだけは言いました
「キキ 俺もういなくなった方がいいのかな。」


キキは黙って傍にいて僕の涙を舐めます




きっとキキにとってそれは優しさではなく
当たり前の愛だったんだと思います




キキは僕らの家族が一番大変な時にいつも傍で見守っていました






キキは父が大好きでした


週に一回父が帰って来る時にはこれでもかと言わんばかりに


大喜びで走り周りました






そんなある日父が失踪しました


そこから僕ら家族の辛い時期が始まりました




みんなの心は疲れきってしまいました




病気や貧しさ不安


いろんなことが一気に押し寄せてきました




そんな家族をキキだけは変わらず
いつものように優しく傍にいました






そして時が過ぎて子ども達は家を出て
6人家族の住んでいた家に
母とキキだけになりました




母は鬱で身体の動かすことがやっとの時
キキのさんぽの時だけは外に出ていました


キキは弱った母にただ黙って寄り添っていました




そしてキキにも老いがやってきました




目もほとんど見えなくなり
身体もろくに動かせなくなって




それでもキキは僕ら家族に変わらず
愛をくれました






そして父が9年半たって帰ってくることになりました




僕らはきっとあんなに大好きだった父が帰ってきて
キキも大喜びだと思いました






そして父が帰ってきた時


キキが今まで見たこともないような声で
鳴いて父を威嚇していました




それでも父が近づくとキキは父の腕に噛みつきました


腕からは沢山血が出ていました






あんなキキが怒っている姿を見たことがありませんでした






その後キキは急激に弱って天国にいきました






きっとキキは自分の想いを命をかけて父にぶつけたんだと思います




きっとずっとずっと父の帰りを待っていたんだよな


大好きだったから


僕にはその時のキキが悲しくて叫んでいるように見えました






キキの目は白くなっても
最後の最後まで優しくて無垢だった






さよならキキ


ありがとうキキ


おやすみキキ


また遊ぼうな


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