恋が彼らを連れ去った
今朝見た天気予報が外れて
陽射しが雨雲を切り離していく
彼は私を自転車に乗せて
飛び出したわ 暑い夏の午後
二人の前に突然現れた
ずっと先まで続く上り坂
私が降りようとしたら
「待って登りきるから」って言って
聞かないで意地を張って見せた
「こんな坂登れないとあのとき諦めたら
君を守れなくなるんじゃないかって思った」
彼は帰り道にそう言って
全速力で坂を下ったわ
毎年この場所に立ってみると
あの日の二人がやってくる
彼は私を自転車に乗せて
すごい顔で坂を登り出す
あの人とよく似た空の色に
私は気付くの彼は風になった
きっとどこかで私を見守っている
坂を登りきると
まるで街は地図と化した
私も飛べるんじゃないかなって
背中に羽を探していた
彼は私を自転車に乗せて
飛び出したわ暑い夏の午後
「サヨナラ」もうあなたに
ずっと頼っていられない
これからは強く生きていこうって決めたんだ
「こんな坂登れないと‥」
あのとき諦めずに
私をここまで連れてきてくれてありがとう