あ・い・す・ま・せ・ん

不登校だった僕らから



僕が不登校をしていたある日のこと




母が「聴いてほしい曲があるねん」と嬉しそうに言った




母は僕が生まれる前から音楽を聴くのが好きで
特にロックが大好きだったから
別に珍しいことではなかった


ただ母がそんなに嬉しそうな表情で紹介してくる曲は
なかなか無い




その曲を歌っているのはCOIL(コイル)という2人組のミュージシャンだった


僕はもうバンドを始めていたし音楽もいろいろ聴いていた
けどCOILは知らなかった




曲のタイトルは【あ・い・す・ま・せ・ん】






「変なタイトルだな」と思っていると
曲がCDデッキから再生された




イントロはとてもいい感じのバンドサウンドで
僕が好きな感じだった




隣で母が僕の様子を伺っているのがわかる




その曲から聴こえてきた歌詞は
まるで自分を肯定してくれているようだった


色んな感情が押し寄せてきた
隣で聴いている母の気持ちが伝わってきたから




きっと母はラジオでたまたまこの曲を聴いて
僕のことを想像して一人で感動していたんだと思う




そんな母の姿が浮かんできて
母がこの歌を通して僕の味方だと伝えてくれていると思えた




僕は恥ずかしくてそんなにリアクションしなかったけれど
僕が感動していることが伝わってしまったのか


僕のことを見て母が感動しているのがわかった




言葉ではいつも上手く言えないけれど
それはきっと言葉じゃない親子の会話だった






もうずいぶん昔の話だけど
あれから僕は自分に否定的になるたびにこの曲を聴いている




この曲を聴くと単純に気持ちが楽になる


あの時の嬉しそうな母の顔が浮かんでくるから






もし僕が今不登校の子におすすめの曲は?と聞かれたら


迷わずこの曲を紹介する




やっぱり音楽っていいな






COIL
「あ・い・す・ま・せ・ん」






雄介






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